腱板断裂
Rotator cuff tear
肩には「腱板」と呼ばれるインナーマッスルが存在します。
腱板は①肩甲下筋腱、②棘上筋腱、③棘下筋腱、④小円筋腱の4つの筋肉で構成されております。腱板があることで、腕の骨(上腕骨)を受け皿である肩甲骨の関節窩に引き寄せることができ、受け皿の中央で上腕骨がスムーズに動かせます。腕を上げたり、腕を捻ったりする動作を十分に発揮するために欠かせない筋肉です。
腱板の上には、肩峰という骨や烏口肩峰靭帯でできた屋根があります。腱板に炎症や疲労が起こると、腱板の働きが弱くなり、腕の骨はスムーズに動かなくなります。腕の骨が持ち上がると、腱板が屋根にこすれて摩耗し、痛みが生じることもあります(肩峰下インピンジメント)。これを何度も繰り返していると、腱板が切れることがあり、この状態を腱板断裂と言います。また、転倒して手をついたり、野球などで投球動作を繰り返すことによっても腱板が切れることがあります(外傷性腱板断裂)。さらに、年を取ると自然に腱板が切れることもあります(変性断裂)。
こちらのページでは腱板断裂について詳しくご紹介していきます。
腱板断裂でよくある症状はこちらです。
●静止した状態での肩の痛み
●仰向けになっているときの肩の痛み
●腕は上がるのだが、腕を挙げたり、腕を降ろしたりする途中での肩の痛み
●新聞を持ったり、ドライヤーを使用する際に肩がだるくなる感覚がある
●腕を挙げる際や降ろす際に引っかかりや音がする感覚がある
●昼は平気だが、夜になると寝ていても痛くなり、夜中に目覚めることがある
腱板断裂は、腕を上げることができても、挙げている途中や下げている途中で(肩と同じ高さ辺り)、痛みが強まることが特徴です。また、動かしたときの痛みだけでなく、仰向けになっているときの方の痛みや、夜中(睡眠中)に強い痛みが生じ、睡眠障害を引き起こすのも腱板断裂の特徴的な症状です。 痛みがなくても、腱板断裂以外の三角筋や大胸筋といった大きな筋肉や肩甲骨の動かし方で痛みを伴わない腱板断裂も存在しております。ただ、少しでも引っかかり感や違和感がある場合は、悪化する前の受診と治療・リハビリをすることをオススメします。
使い過ぎや加齢、骨や靭帯にこすれるなどといった理由で弱った腱板は、けがなどをきっかけに断裂することがあります。これらは、わずかな外力で起こる場合も多く、気付かずに断裂してしまうこともあります。原因はいくつか分類することができます。
重労働、激しいスポーツ、野球、テニス、ゴルフなどの肩をよく使うスポーツは腱板断裂を引き起こすリスクの一つとされています。また、洗濯干しや布団の上げ下げなど、家事の繰り返し作業によって腱板断裂を引き起こすこともあり、主婦の方にとってもリスクのあるケガになります。
喫煙、糖尿病、高脂血症が原因となることがあります。加齢によって、腱板が老化し、さらに病気や喫煙によって腱板内の細い血管が脆くなることが、腱板の弱化の原因と考えられています。
年齢を重ねるごとに肩峰にある骨の棘が大きくなり、腕を持ち上げたときにその骨棘と腱板が衝突することがあります(インピンジメント)。インピンジメントを繰り返すことで、腱板断裂の危険性が高くなります。
摩耗や使いすぎなどではなく、転んだ際、重いものを持ち上げた際など、一度の強い外力で腱板断裂が起きる場合があります。肩関節脱臼や肩鎖関節脱臼などのケガに伴って、腱板断裂を引き起こすことがあります。
腱板断裂の診断は、問診、身体所見、画像検査を行います。
痛みの急激な増強や何かしらの特定のきっかけがあったかどうか、夜間に痛みを感じて、目が覚めることがあるかどうか、などを問診していきます。
腕を挙げる際に関与する筋力(主に棘上筋)、腕を外に回す際に関与する筋力(主に棘下筋)、腕を内側に回す際に関与する筋力(主に肩甲下筋)の筋力低下が見られるかどうかを確認します。また、関節可動域を測定して、拘縮があるかどうかも確認します。その他に、腕を上げる際に、肩峰の下で軋轢音があるか、棘下筋萎縮があるかを調べて、軋轢音や棘下筋萎縮があれば、腱板断裂を疑います。
超音波やMRIの結果が重要なポイントとなります。当院は超音波、MRIを完備しておりますので、紹介することなく当院で検査・診断を受けることができます。
主な治療の目的は痛みの軽減と肩の機能回復になります。腱板断裂の治療方針として、保存療法と手術療法があります。患者さんの年齢や普段の生活活動レベル、職業、スポーツの種類や強度、MRI断裂の程度などを考慮して、治療法を選択しています。
基本方針としては、まず保存療法を試みた後、必要に応じて手術療法を検討していきます。
・安静
急性断裂の場合は、三角巾を使用して肩関節の動きを最小限に抑えます。
・活動制限
スポーツや重労働による肩の使用を制限する指示が出されることがあります。
・鎮痛剤の服用
ロキソニンなどの消炎鎮痛剤、シップなどの痛み止めを用いることがあります。
・理学療法(運動療法)
理学療法士による肩関節の運動を維持するための運動(関節可動域訓練)や筋力を増強するための運動(筋力トレーニング)を実施します。痛みなどに合わせて、実施メニューは変わってきますので、独自の方法ではなく、理学療法士による指導の下、運動に取り組むことをお勧めします。
・注射(ステロイド、ヒアルロン酸、ハイドロリリース)
鎮痛剤の服用や理学療法による痛みの改善が見られない場合に、注射が行われることがあります。ステロイド注射は炎症を抑えて痛みの改善に役立ちます。
保存療法から手術療法への決断が難しいというお悩みが多く、そんな多くの患者さんのお声に応えるため、保存療法と手術療法の中間的な位置付けとして、「再生医療」という治療の選択肢が増えました。
当院はPFC-FD™療法を導入しております。当院では再生医療について、看護師が無料カウンセリングを行っております。お気軽にご相談ください。
●ヒアルロン酸注射で治療を続けているが、なかなか痛みが取れない方
●現在の保存療法で、肩の痛みが改善しない方
●慢性的な肩の痛みが続いている方
●肩の手術に抵抗がある方
手術には、関節鏡視下手術と直視下手術の2種類があります。関節鏡視下手術は低侵襲で傷が小さく済み、術後も痛みが少なく、リハビリの進みも早いことから最近では主要な方法として普及してきています。一方で、大きな断裂は、関節鏡視下手術では縫合が難しい場合が多く、直視下手術を選択する場合があります。
どちらの手術も、手術後は、約4週間の固定と理学療法士による2~3ヵ月の術後リハビリが必要です。
当院では手術を行っておりませんので、手術が必要な場合は治療を受けられる病院をご紹介させていただきます。
また、術後リハビリを受け入れておりますので、少しでも早く、スムーズな回復を望まれる方は理学療法士によるリハビリを受けることをおすすめいたします。